クロスカラーウォーズ
第零話:純白の裁き、東京の夜明け

場所: 東京、新宿。高層ビルの屋上。
時間: 零時を告げた直後。
「白銀の裁き、逃れられない」
その声は、新宿の雑踏から切り離された、冷たい鋼鉄の夜景に響いた。
白石希(シライシ・ヒカリ)は、純白のロングコートに身を包み、頭上のキャスケットの影に涼やかな瞳を隠していた。彼女の右手には、全長2メートルを超す対物ライフル**『シルバーランス』**が、まるで彼女の体の一部であるかのように静かに構えられている。
隣には、妹の莉々花(ルルカ)。ショートカットの髪から覗く瞳は、まだ年相応の感情を宿しているが、手に持つ短銃身のスナイパーライフル**『ホワイトブレイク』**は、彼女がただの少女ではないことを示していた。
二人が立つのは、巨大IT企業のビル最上階、ヘリポート。足元には、電子的な光を放つ青い円形のマーカーが、彼女たちの聖域を示している。マーカーの周囲は、都市の喧騒が濾過された、研ぎ澄まされた静寂。
「姉さん、もう真夜中だよ。黒崎夜音(クロサキ・ヨネ)たちは本当に来るのかな?」莉々花が、少し苛立ちを抑えきれない声で訊ねた。
希は視線を動かさず、夜の帳が降りたビル群の隙間、遥か西側の影を捉えていた。
「来るわ、莉々花。彼女たちは『クロスカラーウォーズ』のルールを最も忠実に守る者たち。色の覇権、そして…私たちの因縁を清算するためなら、彼女たちは闇夜を割ってでも現れる」
希の言葉には、感情の起伏がなかった。ただ、絶対的な確信と、凍てつくほどの『正義』だけが宿っている。彼女たち白石姉妹のテーマは**『純白の裁き』**。そして今夜、彼女たちはその『裁き』を下す相手を知っていた。

**『黒』**チーム、黒崎夜音と影月闇音(カゲツキ・ヤミネ)。
「あいつらだけは、許せない」莉々花の白い歯が、夜景の光を反射した。「私たちの故郷を、あの森を壊した黒。姉さん、今度こそ…!」
「落ち着きなさい、莉々花」希は静かに制した。「感情は弾道(だんどう)を乱す。私たちの使命は**『白銀の裁き』**。狙うのは、ただ標的の排除のみ」
希は特殊なスコープを覗き込んだ。『シルバーマーク』。彼女の能力により、周囲の微細な熱源、電磁波、音の歪みがデジタル情報となって視界に流れ込む。
『ターゲット確認』
情報処理された新宿の夜景の、さらにその奥。地上から数百メートルの高さにある、廃墟と化した巨大建設現場のクレーン。その先端に、二つの小さな、しかし決定的な『影』が留まっているのを捉えた。
黒崎夜音と影月闇音。
「距離、850メートル。風、西北西、秒速3メートル。湿度、45パーセント」希は機械のように情報を読み上げる。「莉々花、あなたは中距離担当。私が仕留め損なったら、**『ホワイトノヴァ』**で広範囲を制圧しなさい」
莉々花は緊張で唾を飲み込んだが、すぐに表情を引き締めた。
「了解。ホワイトブレイク、装填完了!」
希の指が、引き金に触れる。
『純白の裁き、逃れられない』
その言葉が、彼女自身の心に楔を打ち込むように響いた。
静寂の中、希の呼吸が極限まで細められる。
その瞬間、廃墟のクレーンから、一瞬で『影』が消えた。
希のスコープが捉えていたクレーンから、まるで空間が歪んだかのように二つの黒い人影が、隣接するビルの影に滑り込む。
「『シャドウステップ』…やはり初手から来るわね」希は微動だにしない。「夜音の狡猾な戦術。闇音の**『ナイトベール』**と組み合わせて、こちらの射程外からの奇襲を狙っている」
希は、予測弾道計算を瞬時に完了させた。彼女の**『精密射撃』**の能力は、相手の移動パターンすら計算に組み込む。
ターゲットが次に姿を現すのは…、西側から三番目のビル、通信アンテナの影。計算結果は、一点を指し示していた。
**『シルバーランス』**の銃口が、静かにその一点へと移動する。
しかし、その瞬間、予期せぬ事態が発生した。
ビル群の谷間を縫うように、まるで血のような紅蓮の光が走った。
「なっ…!」希は思わず声を上げた。
紅い弾道は、クレーン跡地から西側のビルへ移動する途中の『影』、黒崎夜音のわずか数メートル手前の壁を抉り、火花を散らした。
同時に、夜音たちとは反対側の、南東方向の巨大ビル群から、鋼鉄の弾丸が放たれた音(音速を超えていない低音)が遅れて響き渡る。
夜音の『影』が、一瞬、戸惑ったように停止した。
希の視線が、紅い閃光の発生源、南東方向へと向かう。
そこには、赤と黒の、鮮烈なコントラストを纏った二人の少女が立っていた。

**『赤』**チーム。緋村茜(ヒムラ・アカネ)と赤坂椿(アカサカ・ツバキ)。
「緋村茜…!」莉々花が唸った。
緋村茜は、夜空の下で炎のように鮮やかな赤いライフルを構え、獰猛な笑みを浮かべていた。
「おっと、純白の女王様たち、今宵は『黒』の狩りの時間だろ? 獲物は横取りさせてもらうぜ!」
茜の挑発的な声が、風に乗って微かに届く。
一瞬にして、戦闘の局面は『白vs黒』から、『白vs黒vs赤』の三つ巴へと変貌した。
希は冷静に状況を判断した。
「ターゲット変更。夜音、闇音。そして…緋村茜、赤坂椿。どちらも、この戦場にいる限りは敵」
希の瞳が、冷たい決意を宿して輝いた。
「莉々花、作戦を修正する。**『純白の裁き』**は、まず、この戦場の統制を取り戻すことから始めるわ」
新宿の夜空の下、『クロスカラーウォーズ』、東京ラウンドの火蓋は、三色の衝突によって切って落とされた。
第零話:純白の裁き、東京の夜明け(続き)
場所: 東京、新宿。高層ビルの屋上、そして廃墟と化した建設現場。
時間: 零時を告げた直後から数分経過。
新宿の夜空の下、白石希は冷静に状況を分析した。緋村茜の放った一撃は、明確に黒崎夜音を狙ったもの。それはつまり、赤チームもまた、この「黒」のチームを標的としていることを意味していた。しかし、同時に彼女たちは白石姉妹にとっても介入者となる。
「茜…奴はいつもそうだ。獲物を見つけるとすぐに食らいつく」莉々花が忌々しげに呟いた。「計画が狂ったじゃない!」
「計画は常に流動的。対応力が、この戦いを生き抜く鍵よ」希は莉々花の焦りを嗜めつつ、自身の視界に映る情報を更新した。
夜音と闇音は、茜の奇襲により動きを止めたものの、すぐに次の行動に移っていた。闇音の身体から、黒い霧が立ち上る。それはまるで夜の闇そのものが形を成したかのように、彼女たちの姿を瞬く間に曖昧にしていった。
『ナイトベール』。闇音の変身能力の一つ。周囲の光を吸収し、光学迷彩のように姿を隠す。
「闇音の『ナイトベール』…姿をくらますつもりね」希は『シルバーマーク』の能力を最大限に活用し、微細な熱源と電磁波の揺らぎを追った。「しかし、熱源までは隠しきれない。莉々花、散弾モードに切り替えなさい。あの霧の中に、**『ホワイトノヴァ』**を撃ち込む準備を」
「了解!」莉々花は素早く『ホワイトブレイク』の銃身を操作し、広範囲攻撃用の特殊な散弾モードへと切り替えた。
その間にも、赤チームの攻撃は続いていた。緋村茜は『クリムゾンブレイズ』を連射し、夜音たちが隠れた霧の塊へと向かって紅蓮の弾丸を叩き込む。その弾丸は、壁や障害物に当たると、まるで炎のように爆ぜ、周囲を赤く染め上げた。
隣に立つ赤坂椿は、茜の援護に徹していた。彼女の『スカーレットスティング』は精密射撃用のライフルだが、今夜は直接的な攻撃よりも、夜音たちの脱出経路を塞ぐことに専念しているように見えた。
「赤坂椿…冷静な毒舌家。茜の暴走をコントロールしつつ、確実に標的を追い詰める役ね」希は椿の動きを見て、改めて赤チームの連携の恐ろしさを感じていた。「厄介な相手だわ」
夜音と闇音は、闇の霧と**『シャドウステップ』**を駆使して、茜の猛攻を巧みにかわしている。だが、いつまでも隠れきれるわけではない。
その時、希の『シルバーマーク』が、霧の中から一瞬だけ現れた、微かな輪郭を捉えた。
「捉えたわ!」
希の指が、引き金に吸い込まれるように動いた。
『シルバージャッジメント』!
『シルバーランス』から放たれた純白の光弾は、夜の闇を切り裂き、正確に霧の塊の中心へと突き進んだ。それは単なる弾丸ではない。希の精密射撃能力が込められた、純粋な裁きの光。
光弾は霧を貫き、その奥に隠れていた闇音の左肩をかすめた。
「ぐっ…!」闇音の小さな呻き声が、希の耳には確かに届いた。
霧が、一瞬にして晴れる。そこに姿を現したのは、かすり傷を負いながらも、鋭い眼光で希を睨みつける闇音と、その隣で警戒を強める夜音だった。
「白石希…!」夜音が、憎しみを込めた声で呟いた。
「裁きは下された。夜音、闇音。ここで、終わりなさい」希の瞳には、一切の迷いがなかった。
しかし、その言葉が響き終わる前に、再び状況は急変する。
今度は、白石姉妹が立つビルとは反対側の、東から風が吹き荒れた。その風はただの風ではない。微かに、花の香りを運ぶかのような、甘くもどこか冷たい空気の渦。
そして、その風に乗って、まるで幻影のように現れたのは、緑のロングコートを纏った二つの人影。

**『緑』**チーム。緑川葉月(ミドリカワ・ハヅキ)と風葉芹歌(カザハ・セリカ)。
葉月は、腰まで届く長い緑の髪を風になびかせ、冷徹な瞳で戦場全体を見渡していた。その手には、植物の蔓を模したような有機的なフォフルライフル**『フォレストウィスパー』**。
隣に立つ芹歌は、小鳥のように可憐な容姿とは裏腹に、強い意志を秘めた表情で、特殊な弓を構えていた。彼女の身体からは、まるで生命力が溢れるかのように、微かに緑色の光が揺らめいている。
「風の調べ…そして森の囁き…」希の視線が、警戒の色を帯びた。「緑チーム。彼女たちも、この戦いに参入した」
葉月が、まるで都市のビル群と一体化するように、**『ナチュラルカモフラージュ』**の能力を発動させた。その姿は、一瞬にして背景に溶け込み、視認することが困難になる。
そして、芹歌は弓を引き絞り、緑色の光を放つ矢を夜音と闇音に向けて放った。
『フローラルウィスパー』!
矢は、夜音たちが立つビルの壁に突き刺さると、瞬く間に大量の蔦と花を咲かせ、彼らの退路を塞ぎにかかった。
「ちっ…面倒な連中が、また増えたな」夜音が舌打ちした。
戦場は混沌の度合いを深めていく。
白、黒、赤、緑。四色の思惑が、新宿の夜空の下で複雑に絡み合い、激化していく。
希は、再び『シルバーランス』を構え直した。
「莉々花、気を緩めないで。この戦場は、もはや私たちの予測の範囲を超えつつある。しかし…**『純白の裁き』**は、何者にも邪魔させない」
第零話:純白の裁き、東京の夜明け(最終局面)

場所: 東京、新宿。高層ビルの屋上、廃墟の建設現場、そして夜空。
時間: 零時を告げた直後から数分経過。
天海葵の一撃により、黒崎夜音と影月闇音は廃墟の建設現場の足場へと転落し、戦闘不能に近い状態に陥った。しかし、この一撃は、戦場の新たな火種を投下することになった。
「あの青い奴…!」緋村茜は、怒りに燃える瞳で新宿パークタワーの葵を睨みつけた。「俺の獲物を勝手に横取りしやがって…許さねぇ!」
茜は、標的を葵へと切り替える。
「椿!援護しろ!あのサイボーグを叩き落とす!」
「了解。しかし茜、冷静に。青は…」赤坂椿が警告しようとしたが、茜の熱血な性格は、すでに冷静な判断を失っていた。
『フレアバースト』!
茜の『クリムゾンブレイズ』が、まるで巨大な炎の塊を吐き出すかのように、葵が立つ新宿パークタワーの最上部へと向かって飛翔した。
その攻撃は、しかし、葵には届かない。
蒼井凛の背中から展開された**『ドローンウイング』**が、一瞬にして超高速で葵の周囲を覆い、茜の『フレアバースト』を完璧に弾き返したのだ。
「無駄よ、赤」葵は冷たい声で呟いた。「私の精密射撃と凛の防御を破れるとでも?」
凛は、顔色一つ変えずに茜の攻撃を防ぎ切った。そのサイボーグの体には、一切の感情の揺らぎが見られない。
「ちっ…硬ぇな!」茜は焦れた。
その混乱の隙を突いたのは、緑チームだった。
緑川葉月は、依然として『ナチュラルカモフラージュ』で姿を隠したまま、狙撃の機会を伺っていた。そして、風葉芹歌が動く。
芹歌は、再び特殊な弓を引き絞ると、今度は緋村茜と赤坂椿の足元に向けて、緑色の光る矢を放った。
『フローラルカモ』!
矢が着弾すると、茜と椿の足元から瞬く間に植物の蔓が伸び、彼らを捕縛しようと巻きつき始めた。
「な、なんだこれ!?」茜は驚き、足元の蔓を銃で叩き切ろうとするが、蔓は瞬時に再生し、彼女の動きを制限する。
「グリーン…余計な真似を…!」椿が毒づいた。
この状況を、白石希は冷静に見つめていた。
「莉々花。好機よ。赤と緑が牽制し合っている今が、青を叩くチャンス」
「えっ…!?青を?でも、姉さん、ターゲットは黒じゃ…」莉々花は混乱したが、希の表情から強い意志を感じ取り、すぐに行動に移った。「了解!行くよ!」
莉々花の『ホワイトブレイク』から、無数の白い光弾が夜音と茜の間を縫うように放たれた。
『ノヴァバースト』!
光弾は着弾すると、小さな爆発を起こし、夜音と茜の間に一時的な煙幕を作り出した。
「ちっ!」茜が煙幕に視界を遮られ、動きを止める。
「また白石か!」夜音も苛立ちを隠せない。
その隙を逃さず、希は再び『シルバーランス』を構える。スコープが破損していても、彼女の『精密射撃』の能力は健在だった。
「天海葵…ここで貴様を叩く!」
希の放った一撃は、煙幕の向こうにいる葵の『アクアストライカー』の銃身を正確に狙っていた。
ドォンッ!
鈍い金属音と共に、葵のライフルの銃身が大きく歪んだ。
「私の…『アクアストライカー』が…!?」葵は、信じられないという表情で損傷したライフルを見つめた。
精密射撃に特化した彼女にとって、ライフルの損傷は致命的だった。
「決まった!」莉々花が歓喜の声を上げる。
しかし、その瞬間、さらなる混乱が戦場を襲う。
新宿パークタワーの最上部、葵が立っていた場所のさらに上空、月明かりを遮るように巨大な影が舞い降りてきた。
まるで夜の幻影が具現化したかのような、妖艶な紫のオーラを纏った二人の少女。

**『紫』**チーム。村崎菫(ムラサキ・スミレ)と紫蝶魅音(シチョウ・ミオン)。
菫は、魅惑的な笑みを浮かべ、夜の闇に映えるヴァイオレット色のロングコートを翻していた。その手には、幻影を操る特殊なライフル**『ヴァイオレットファントム』**が握られている。
彼女の隣に立つ魅音は、小悪魔のような笑みを浮かべ、身体から毒々しい紫色の光を放っていた。その姿は、時折、蝶や蜘蛛、猫の幻影を伴い、見る者を惑わせる。
「やぁねぇ、みんな。ずいぶんとはやってるじゃない」菫の声は、まるで甘い毒のように、戦場全体に響き渡った。「私たちも、混ぜてちょうだい?」
『ミラージュオーラ』!
菫が能力を発動させると、新宿のビル群のあちらこちらに、彼女たち紫チームの『幻影』が一斉に現れた。それは、残像なのか、本物なのか、誰にも判別できない。
「幻影…!?」希は驚きを隠せない。
彼女の『シルバーマーク』が、無数の幻影に翻弄され、本物の菫と魅音の位置を特定できない。
「おいおい、また新しいのが来たのかよ!」茜が不満げに叫んだ。
夜音と闇音も、紫チームの参入に警戒を強める。
「紫蝶魅音…変身能力を持つ者…」葵は、傷ついたライフルを構えながら、菫たちを睨みつけた。「一体、どこまで状況を複雑にすれば気が済むの…!」
魅音が、いたずらっぽく笑いながら、地面に向けて特殊な糸を放った。
『ポイズンウェブ』!
糸は瞬く間に広がり、地面に巨大な蜘蛛の巣のような毒の網を形成していく。その網に触れたものは、一瞬で動きを封じられるだろう。
この戦場は、もはや混沌そのものだった。
白、黒、赤、緑、青、そして紫。六色の思惑が、新宿の夜空の下で複雑に絡み合い、それぞれの狙撃手たちが、互いの命を奪い合う準備を整えていく。
希は、再び夜空を見上げた。
「莉々花、この戦場は…まさか、これほどまでに混迷を極めるとは…」
「でも、姉さん…私たちは、負けない!」莉々花は、まだ少し怯えながらも、強い眼差しで答えた。
希は、妹の言葉に頷いた。
「ええ、そうね。どんな状況になろうとも…『純白の裁き』は、必ず為し遂げる」
新宿の夜明けは、まだ遠い。そして、この激しいクロスカラーウォーズは、始まったばかりだった。

第零話:純白の裁き、東京の夜明け(最終局面 II)
場所: 東京、新宿。高層ビルの屋上、廃墟の建設現場、そして夜空。
時間: 零時を告げた直後から激戦の数分後。
新宿の夜は、七色の光と影が織りなす壮絶な戦場と化していた。
白石希と莉々花の白。黒崎夜音と影月闇音の黒。緋村茜と赤坂椿の赤。緑川葉月と風葉芹歌の緑。天海葵と蒼井凛の青。そして、村崎菫と紫蝶魅音の紫。
それぞれの思惑が激しくぶつかり合い、誰もが優位に立てない混沌とした状況が続いていた。
葵は、破損したライフルを片手に、迫り来る夜音と茜の攻撃を凛の援護と共に捌いていた。魅音の『ポイズンウェブ』が地面を覆い、逃走経路を制限する。葉月の『ナチュラルカモフラージュ』は依然として脅威であり、どこから狙撃が飛んでくるか分からない。
「この状況、誰かが動かないと膠着状態ね…」希は、莉々花と共に警戒態勢を取りながら、戦場全体を見渡していた。
その時、一筋の閃光が、新宿の夜空を切り裂いた。
ピカッ!
それは、太陽が昇ったかのような、強烈な光だった。一瞬にして、戦場にいる全ての狙撃手の視界を奪う。
「ま、眩しい!?」莉々花が目を覆う。
「なんだ、この光は!?」茜が叫んだ。
夜音も、闇音も、葵も、菫も、葉月も、皆がその突然の閃光に身動きを止めた。
その光が収まった瞬間、東京モード学園コクーンタワーの最上部、巨大な球体型のオブジェの上に、二人の少女が立っていた。
鮮やかな黄色を纏った、双子の姉妹。

**『黄色』**チーム。向日葵ひまわり(ヒマワリ・ヒマワリ)と向日葵柚葵(ヒマワリ・ユウキ)。
向日葵ひまわりは、太陽のように明るい笑顔を浮かべ、陽気なオーラを放っていた。その手には、まるで太陽の光を凝縮したかのような金色のライフル**『サンバースト』**が握られている。
隣に立つ妹の柚葵は、姉とは対照的に内気な表情を見せていたが、その両腕には鋭い鉤爪**『ゴールデンタロン』**が装備されており、見る者に確かな殺意を感じさせた。
「ひまわり、やりすぎだよ!みんな、びっくりしてるじゃない!」柚葵が小さな声で姉に注意する。
「大丈夫だって、柚葵!これが私たち黄色の挨拶だよ!」ひまわりは屈託のない笑顔で応じた。「さあ、みんな!私たちも、この楽しいお祭りに入れてもらうよ!」
ひまわりのテーマは**『閃光の如く、標的を捉える』**。彼女たちは、自らの存在を誇示するように、堂々と戦場に現れた。
「黄色…双子の向日葵姉妹か…!」希が呟いた。
彼女たちの参入により、戦場は七色全てが揃い、本当の意味でのバトルロイヤルが始まったのだ。
「あの自由奔放な黄色か…厄介なのがまた増えた」葵は苦々しい表情を浮かべる。
菫は、魅惑的な笑みを深めた。「あらあら、賑やかになってきたじゃない?面白くなりそうね」
茜は、ひまわりたちの登場に目を輝かせた。「おいおい、面白ぇ奴らが出てきたじゃねぇか!」
夜音は、双子の姉妹の動きを警戒するように、闇音と共に身構えた。
葉月は、依然として姿を隠したまま、ひまわりたちの能力を分析しようと試みていた。
「莉々花、気を緩めないで。黄色は予測不能な動きをする。特に、あの姉妹の連携は侮れない」希は指示を出す。
ひまわりが『サンバースト』を構え、その照準を、戦場の中心で混乱状態にある黒崎夜音と影月闇音へと定めた。
「悪いね、黒!お祭りの主役は、私たち黄色だよ!」
『サンフラッシュ』!
ひまわりの『サンバースト』から放たれたのは、太陽の光を圧縮したかのような、超高速の閃光弾。それは、夜音と闇音の隠れ場所へと一直線に向かっていく。
同時に、柚葵が『ゴールデンタロン』を展開し、まるで夜空を滑るように廃墟の建設現場のクレーンを駆け上がっていく。
『クローストライク』!
柚葵は、鋭い鉤爪でクレーンのワイヤーを切り裂き、その勢いで夜音と闇音の頭上へと飛び降りた。
「きゃあああ!?」闇音が驚きの声を上げる。
夜音は、柚葵の奇襲に反応しようとするが、ひまわりの『サンフラッシュ』が迫っており、身動きが取れない。
混沌は、極まった。
七色の狙撃手たちが、それぞれの思惑と能力をぶつけ合い、新宿の夜空の下で壮絶なバトルロイヤルを繰り広げていた。
白石希は、破損したライフルを握りしめ、この激しい戦場を見つめていた。
彼女の瞳には、迷いはない。ただ、『純白の裁き』を為し遂げるという、揺るぎない決意だけが宿っている。
「莉々花、油断は禁物よ。この戦場は、まだ始まったばかり。だが…私たち白石姉妹は、どんな困難にも屈しない」
新宿の夜明けは、まだ来ない。
そして、「クロスカラーウォーズ」の第一話は、まさにこの七色の激突と共に、終わりを告げようとしていた。
第零話:七色の閃光、新宿の攻防

場所: 東京、新宿。高層ビルの屋上、廃墟の建設現場。
時間: 激戦の最中、夜明け前の最も深い闇。
新宿の夜は、七色の光と影が織りなす壮絶な戦場と化していた。向日葵ひまわりと柚葵の黄色の閃光が、混沌をさらに加速させる。夜音と闇音は、ひまわりの『サンフラッシュ』と柚葵の『クローストライク』によって完全に動きを封じられ、廃墟の足場に追い詰められていた。
「もう終わりだ、黒!」ひまわりは、勝利を確信したかのように叫んだ。
その時、突如として、新宿の空に巨大な白いホログラムが展開された。それは、このバトルロイヤルの主催者を示す、謎の組織の紋章だった。
『第一フェーズ終了。各チーム、現在のポイントを保持し、戦闘を一時中断せよ。最終フェーズへの準備期間に入る』
無機質なアナウンスが、戦場全体に響き渡る。
それまで激しく撃ち合っていた全ての狙撃手たちが、一斉に動きを止めた。
「第一フェーズ…終了…?」莉々花が呆然と呟いた。
「くそっ!せっかく良いところだったのに!」緋村茜は悔しそうにライフルを地面に叩きつけた。
夜音は、負傷した肩を押さえながら、憎々しげにひまわりたちを睨んでいた。
天海葵は、損傷したライフルを携え、蒼井凛と共に静かにその場を離れていく。
緑川葉月と風葉芹歌は、姿を消したまま、どこかへと去っていった。
村崎菫と紫蝶魅音は、甘く嘲笑うかのように幻影を消し、夜の闇へと溶け込んでいく。
白石希は、ホログラムを見上げながら、冷静に状況を判断していた。
「どうやら、これ以上は無理強いしないということね。ポイント制のバトルロイヤル…初戦から激戦だったわ」
莉々花は、まだ興奮冷めやらぬ様子で、周囲を見回していた。
「ねえ、姉さん。結局、私たちって、勝ったの?」
希は静かに首を振った。
「勝敗は、まだ分からない。だが…今回の戦いで、私たちは多くの情報を得たわ。各チームの能力、そして…私たちが次に何をすべきか」
希の視線は、遠く、夜の闇に消えていく黒崎夜音と影月闇音の方向へと向けられていた。
夜音の故郷を破壊した者たち。白石姉妹にとって、彼らとの因縁は、決して避けては通れないものだった。
『最終フェーズは、新たな舞台で展開される。詳細は後日通達する』
ホログラムが消滅し、新宿の夜空には再び静寂が戻った。
だが、その静寂は、次の戦いの予兆でもあった。
「私たちも、撤退するわ、莉々花」希は『シルバーランス』を静かに収めると、妹に促した。「最終フェーズに向けて、準備を怠るわけにはいかない」
「うん…!でも、次こそは絶対に、私たち白石姉妹が勝つんだから!」莉々花は力強く頷いた。
希は、妹の言葉を聞きながら、心の中で繰り返した。
『純白の裁き、逃れられない』
この戦いは、まだ始まったばかり。そして、7色の女子高生スナイパーたちの、それぞれの思惑と因縁が絡み合う「クロスカラーウォーズ」は、次の舞台へと続く。
第一話:完
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