パンダ探検隊:秘境のロストバンブー|シーズン6:バザール・タウの謀略
潜入:銀河の闇市場
I. バザール・タウへの到着
木星の衛星エウロパから、宇宙船「パンダ・エクスプレス」は長大なワープを成功させ、銀河系の辺境にある自由交易ステーション、バザール・タウへと到達した。ここは星間連合の支配域に隣接しながらも、どの勢力にも属さない無法の市場であり、異星種のパイロットや密輸業者が集う、銀河の裏玄関だった。
船は、フェリックスが施した特殊な竹の葉型シールドと、ロストバンブー素材のステルス機能により、巨大な宇宙デブリの中に巧妙に隠されていた。
ブリッジでは、医療ポッドから復帰したばかりのキャプテン・パンダが、リン・メイの厳しい視線を受けながら、メインパネルを覗き込んでいた。エウロパでの覚醒以来、彼の体からは時折、制御不能な緑のエネルギーが微かに漏れ出ていた。
「バザール・タウの電磁波ノイズは酷いわね。メリー、情報収集は可能?」リン・メイが尋ねる。
情報分析担当のメリーは、冷静に答えた。「ノイズは多いけれど、それは逆に好都合よ。星間連合の監視も、このカオスの中では鈍る。古代パンダのデータによると、ここにロストバンブーの**『力の断片』**が持ち込まれているはず」
キャプテン・パンダはコンパスを取り出した。コンパスはバザール・タウの深層、ブラックマーケットの中心部を指し示している。
「タケシとラビット。お前たちに潜入任務を任せる。タケシは護衛と交渉役。ラビット、お前は持ち前の**『穴掘り』**スキルで、情報将校・スニークの目を掻い潜れ」
「了解!任せてください、キャプテン!」タケシはG-Suitではなく、目立たないよう異星のコートを羽織っていた。
ラビットは偵察機「バンブー・スラスター」の調整を終え、得意げに片耳を立てた。「ニンジン泥棒の腕は宇宙でも錆びつかないよ。目と耳はメリー姉さんに繋がってる。スニークとかいう情報将校は、俺の鼻を出し抜けないね!」
メリーはラビットに小さな高性能受信機を渡した。「いい?ラビット。闇市場は危険な取引ばかりよ。特に、星間連合の情報将校スニークは、非常に狡猾で、彼のネットワークはバザール・タウ全域に張り巡らされている。無益なトラブルは避けて、私の指示を最優先に」
「はいはーい」ラビットは軽やかに頷いたが、その目は既に市場で売られているかもしれない珍しい異星の食材に向いていた。
II. 闇市場への潜入と情報将校スニーク
バザール・タウは、巨大なドーム状の人工空間であり、無数の異星人や種族が入り乱れ、怪しげな光と匂いが充満していた。
タケシとラビットは、雑踏の中を慎重に進む。タケシは屈強な体格で周囲の小競り合いを威圧し、ラビットはその機動力を活かして、狭い通路や通気口を縫って市場の奥へと向かっていた。
「メリー、情報将校スニークの居場所は?」タケシが通信で尋ねる。
「待って。彼のシグナルは頻繁に場所を変えている。彼が私たちを待ち伏せしている可能性が高いわ」メリーが答える。
その時、ラビットが、市場の一角にある薄暗いバーの裏口を指差した。
「タケシ、見て!あそこにいるのは、ゼタの組織の紋章をつけたタコの種族だよ。あいつらが、スニークの情報屋だ。匂いがする」
ラビットの直感は鋭かった。タコの種族の情報屋は、手に持ったデータパッドを覗き込みながら、神経質そうに周囲を警戒している。
「ラビット、近づくな!罠かもしれない!」メリーが警告したが、既に遅い。
ラビットは、バザール・タウ名物の巨大な宇宙芋の山に紛れ込み、一瞬で情報屋の背後に回り込んだ。情報屋が目を瞬かせたその瞬間、ラビットはポケットから小型の**盗聴器(バンブー・バグ)**を出し、情報屋のコートに貼り付けた。
――任務完了。 ラビットは軽やかなステップで雑踏の中へ消える。
メリーは驚きを隠せない。「ラビット、速すぎるわ!データリンク開始!」
メリーはすぐに情報屋の通信傍受を始めた。情報屋が、ある種の周波数で通信を開始する。
『スニーク様、ターゲットは確認できません。ですが、極めて不自然なノイズを検出しました。まるで猫の鳴き声のような……』
メリーはブリッジで顔をしかめた。「猫の鳴き声?フェリックス、あなた、何か試した?」
フェリックスは毛を梳かしながら言った。「ニャ?俺のチューンナップは完璧だ。ノイズなんて出すわけねぇだろ。あれはラビットの仕業だ」
ラビットは、潜入時に相手の注意を逸らすため、フェリックスが残した試作品の猫型ノイズジェネレーターを情報屋の近くに仕込んでいたのだ。
メリーはラビットの機転に感心しつつ、傍受した通信内容を解析した。
『問題ない。ノイズは無視しろ。ターゲットがまだ市場に潜伏しているなら、必ず**『青い竹の子』のブローカーを探すはずだ。お前は監視を続けろ。私は、ブローカーを確保して奴らを誘い出す**』通信の主は、情報将校スニーク。四つ腕を持つ、爬虫類系の種族だった。
「キャプテン、やはりスニークは、ロストバンブーの断片を囮にするつもりよ。ブローカーを先に確保しないと!」メリーが報告する。
III. 宇宙パンダとの遭遇
タケシとラビットは、青い竹の子のブローカーを探し、市場の最深部、異星の骨董品が並ぶエリアへ辿り着いた。そこは、ロストバンブーのエネルギーを偽装するための強力な干渉フィールドが張られていた。
「この先だ。ロストバンブーの反応が強い。タケシ、気をつけろ」ラビットが耳を動かしながら囁いた。
二人が辿り着いたブースには、無数の怪しい骨董品が並べられていたが、肝心のブローカーの姿は見えない。
その時、ブースの奥から、彼らを呼ぶ声がした。
「そこのあなたたち……まさか、地球(テラ)のパンダかね?」
二人が振り向くと、そこに立っていたのは、見慣れない姿のパンダ型生命体だった。そのパンダは、地球のパンダよりも毛並みが青みがかっており、額には小さなクリスタルが埋め込まれていた。
「お前は……誰だ?」タケシが警戒して構える。
「私はチーチャイ。このバザール・タウで、古代パンダ文明の遺産を細々と守っている者だ。あなたたちが探しているロストバンブーの断片、そして……マミーパンダの旅の真実を知っている」
チーチャイは、地球外で初めて遭遇した、パンダの同胞だった。
「マミーパンダのことを知っているのか?」キャプテン・パンダが通信で割って入る。
チーチャイは驚いた表情で、キャプテン・パンダの存在を感じ取った。「その力……やはり、あなたは起源の血筋。マミーパンダは、私たちが遠い昔に地球へ送り込んだ、**ロストバンブーの種を回収するための『導き手』**でした。彼女はロストバンブーの力で、私たち宇宙パンダの技術を学び、地球の文明を守っていたのです」
チーチャイは、ブースの床下から小さな青い竹の子の形をしたクリスタルを取り出した。
「これが、あなたが探している『力の断片』。しかし、これは罠です。星間連合の情報将校スニークが、これを囮にあなた方を誘い出そうとしています」
IV. 情報将校スニークの包囲網
チーチャイが警告を発した直後、タケシの背後に、四つ腕の爬虫類人、スニークが静かに現れた。
「さすが、古代の血筋(パンダ)。ノイズの裏の真実に辿り着くとはな」スニークは冷笑する。「チーチャイ、貴様、我々を裏切ったな。この断片は、お前の命と引き換えに回収させてもらう」
スニークの手には、小型ながら高出力のエネルギー・ネットガンが握られていた。
「チッ、囲まれたか!」タケシはG-Suitを起動させ、戦闘態勢に入る。
その時、ラビットは、スニークの背後にある骨董品の山に目をやった。彼のお目当ての異星の珍しいニンジンが、その山の最上段に置かれていたのだ。
「ニンジン!」ラビットは目を輝かせ、タケシの制止も聞かず、俊敏な動きで骨董品の山を駆け上がり始めた。
「ラビット!何をしている!」タケシが怒鳴る。
スニークもまた、ラビットの予測不能な行動に一瞬、戸惑った。
「そのウサギめ、何を狙っている!?」
ラビットは、ニンジンを掴むと同時に、その下の骨董品を蹴り落とした。その中には、高密度な宇宙爆弾の偽装品が混ざっていた。
ドガラガラ! 爆弾の偽装品がスニークの足元で爆発する。
それは本物の爆発ではなかったが、その閃光と爆音が、市場全体にパニックを引き起こした。異星人たちは我先にと逃げ出し、市場は大混乱に陥った。
「くそっ、このノイズめ!」スニークは視界を奪われ、体勢を崩した。
「今だ、タケシ!チーチャイを連れて行け!」ラビットはニンジンを口にくわえながら、チーチャイとタケシを小型潜水艇バンブー・スラスターの隠し場所へと誘導した。
スニークはすぐに追跡を再開したが、メリーがラビットの盗聴器から得た情報に基づき、市場のセキュリティシステムにフェリックスのチューンナップを施したウイルスを流し込んでいた。
『ニャー!これで通路が閉鎖されるぜ!ざまぁみろ!』フェリックスがブリッジで高笑いする。
市場の一部のシャッターが閉じられ、スニークの追跡を妨害した。
V. エピローグ:古代パンダの使命
タケシ、ラビット、そして宇宙パンダのチーチャイは、無事にパンダ・エクスプレスに帰還した。
チーチャイは、ブリッジの医療ポッドで休むキャプテン・パンダに、青い竹の子の断片をそっと手渡した。断片はキャプテン・パンダの胸元の核と共鳴し、緑色の光を放つ。
「キャプテン・パンダ。あなたは、私たちのロストバンブーの真の継承者です。マミーパンダは、私たちが星間連合の追跡から逃れるために、地球を最後の隠れ蓑として選び、あなたを育てたのです」
キャプテン・パンダは静かに目を開いた。「そうか……俺は、マミーパンダの使命を継いでいたのか」
チーチャイはさらに、驚くべき情報をもたらした。
「星間連合の首席科学者ドクター・サイラスは、ロストバンブーの起源を解析し、その力を兵器化しようとしています。彼の最終研究施設は、星間連合の最深部にある**『ネビュラ・プラント』と呼ばれる惑星にあります。私たちがこれから向かうバザール・タウの先**、そこが次の目的地です」
リン・メイは、回収したクリスタルデータバンクと、チーチャイの情報を照合した。
「チーチャイの言う通りよ。ネビュラ・プラント。そこがロストバンブーの起源に最も近い場所だわ。ゼタの真の目的は、ロストバンブーを使い、銀河の時間を停止させることよ」
タケシは、再びG-Suitを装着し、覚悟を決めた顔で言った。「待ってろ、ゼタ。そしてドクター・サイラス。今度は正面から叩き潰してやる」
ラビットは、手に入れた珍しいニンジンをかじりながら、ブリッジの窓の外を見つめた。「次の星も、きっと面白い情報が埋まってるぞ!」
キャプテン・パンダは、立ち上がり、ブリッジの中心に立った。彼の瞳には、以前のような迷いはなかった。
「リン、次のワープ座標をセットしろ。目標、ネビュラ・プラント。ロストバンブーの真実を、今度こそこの手で掴む」
「パンダ・エクスプレス、ワープ・シークエンス開始!」
緑の光を帯びた宇宙船は、星間連合の支配域深部、ネビュラ・プラントへと向けて、再び銀河の闇に消えていった。
(続く)


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