クロスカラーウオーズ|平安異聞「七色ノ裁キ」|第七話:漆黒の帰還と、裁きの真実

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第七話:漆黒の帰還と、裁きの真実

一. 扉の奥と、無色の瘴気

石扉が開き、現れたのは、霊力パイプが集中する巨大な円形の空間だった。そこは、都の地下深くにあるとは思えないほど広大で、部屋全体から底知れない**「無色の瘴気」**が噴き出していた。

この瘴気は、七色の霊力すべてを中和し、異能者の力を急速に奪い去る。

「これは…純粋な色の否定だ。ここに長くいれば、我々の霊力は枯渇します」葵が水鏡で空間の霊力密度を瞬時に解析し、警告を発した。

「チッ…光速の呪布でも、この瘴気は完全に払えない」向日葵が舌打ちする。

空間の中央には、禍々しい無色の祭壇が鎮座しており、その祭壇を護るように、二つの影が立っていた。

黒崎 夜音(黒)と、パートナーの影月 闇音だ。

夜音は、耀たちを待ち構えていたかのように、冷徹な視線を浴びせた。

「よく来たな、白石 耀。愚かな裁き人よ」

二. 漆黒の告発、裁きの血痕

夜音は、同盟の面々を無視し、耀ただ一人に憎悪の念を集中させた。

「貴様は、私に復讐するためにここへ来たと思っているか?違う。貴様がこの禁忌の場所へ来るのは、黒幕のシナリオに組み込まれていたからだ」

夜音は、袖から一つの木簡を取り出した。それは、耀が地下迷宮の入口で発見したものとは異なる、夜音の故郷から盗み出された、漆黒の血族の秘密が記された木簡だった。

夜音は、それを耀の足元へ投げつけた。

「これは、『清明なる血筋』の長老が、貴様を『清明の執行者』として任命した際に記した極秘の儀式文書だ」

耀が震える手で木簡を拾い上げると、そこには、数年前に黒崎一族紫苑一族が「穢れ」として一掃された事件の、恐るべき裏側が記されていた。

白石 耀純白の霊力は、漆黒紫苑特異な霊力を、痕跡を残さず吸収・浄化するのに最も適している。長老の呪言を霊符に込めることで、彼女は**『自我なき裁きの剣』となる。すべての異能の排除と回収は、彼女の正義**の名の下に実行されるべし』

耀の視界が歪んだ。自分が行った**「裁き」**は、誰かを守るための正義ではなく、黒幕の霊力回収と、敵対者の計画的な排除のための、非情な暗殺行為だったのだ。

三. 憎しみの解放と、白の崩壊

「見ろ、白石 耀!」夜音は、祭壇に向かって手を広げた。「貴様が浄化したはずの私の故郷の霊力は、すべてあの祭壇に吸い上げられ、無色の力に変換されている!」

耀は、自らの純白の霊符を握りしめた手が、激しく痙攣するのを感じた。

「私の…裁きは、穢れだったのか…」

彼女が信じていた理(ことわり)は、全て偽りだった。彼女の純粋さこそが、最も効果的なとして利用されていた。

夜音の瞳は、燃えるような憎悪を宿していた。

「貴様の純白は、私たちを欺き、殺すための鎖だ!貴様がこの扉を開けたのも、黒幕に**『純白の霊力』**という最後の餌を捧げるためだ!」

その瞬間、夜音は祭壇の無色の瘴気を自らの漆黒の霊力で一瞬だけ引き裂き、その隙間から闇夜の呪詛を放った。狙いは祭壇ではなく、完全に動揺し、霊力が乱れている耀の心臓だった。

「消えろ、裁き人!」

四. 漆黒の盾と、純白の意志

夜音の闇夜の呪詛は、耀の心臓へ向かって光速で迫る。耀は、心の崩壊により、結界を展開する余裕すらなかった。

しかし、その瞬間、無色の祭壇の側面から、隠されていた無色の番人(Sentinel)が起動した。それは、複数の七色の残滓を無理やり融合させたかのような、醜悪な異形の存在だった。

番人は、耀と夜音の衝突を良しとせず、最も破壊的な霊力を持つ夜音の背中を、無色の瘴気を凝縮させた一撃で襲った。

「夜音!」

耀は、動揺を振り払い、ではなく意志で動いた。彼女の霊力は、復讐者である夜音を討つためのではなく、初めて守るための盾となった。

耀の清明結界が、夜音の背後を寸分違わず覆い、無色の番人の一撃を真正面から受け止めた。

ゴオオオッ!

結界は激しい霊力の衝突により悲鳴を上げるが、砕け散ることはない。その一瞬の防御は、「憎しみ合う二人が、共通の敵によって命を奪われることを許さない」という、耀の新たな意志の光だった。

夜音は、耀の純白の結界が、自らの背中を護っているという事実に、目を見開いた。彼女の憎悪の炎が、一瞬だけ揺らぎ、消えた。

五. 漆黒と純白の共闘

「なぜ…私を庇った?」夜音の声には、復讐の念ではなく、純粋な疑問が混じっていた。

耀は、結界を維持しながら、絞り出すように答えた。

「私は、理を捨てた。私の裁きは、貴女の故郷を滅ぼした。その事実は消えない。だが…私はもう、誰かの道具にはならない」

彼女は、初めて純白の霊符を、ではなく怒りの霊力で染め上げた。

「私の裁きは、貴女への贖罪ではない。この都の真の穢れを断つ、私の意志だ」

夜音は、憎しみを捨てたわけではないが、目の前の耀が、かつて自分を討伐した**「自我なき道具」**ではないことを理解した。

「チッ。…贖罪など、不要だ。私を道具にした奴らを、貴様の純白で裁け

夜音は、影月 闇音と共に、祭壇の周囲に高速で闇夜の呪詛のトラップを張り巡らせる。葵(青)は、そのトラップの霊力経路を解析し、向日葵(黄)は、呪布で祭壇への無色の瘴気の流れを遮断した。

白、黒、青、黄。

異なる正義憎悪を持つ四つの色が、最終決戦の舞台で、ついに真の共闘を開始した。祭壇の奥から、彼らの存在を嘲笑うかのように、無色の存在の笑い声が響き渡った。

「お前たちのは、すべて私のだ」

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