クロスカラーウオーズ|平安異聞「七色ノ裁キ」|第五話:閃光の双子と、市井の抵抗

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第五話:閃光の双子と、市井の抵抗

一. 都への帰還と、市井の嘆き

翠葉の森を後にした耀は、妹の咲耶と共に都へ戻った。

「無色の印」を持つ古の妖の封印は破られ、その霊気は都全体に不穏な影を落としている。しかし、朝廷からは何のお触れもなく、陰陽寮は「御所の安寧」のみを優先し、市井の民の保護には無関心だった。

耀は、自らの純白の裁きが都の**理(ことわり)**に縛られていたがゆえに、この事態を招いたのだと痛感していた。

(理は、都の深き闇を隠すための結界だった。そして、その結界の外、市井(しせい)の民は…穢れに晒されている)

耀は、葵(青)が示した情報にあった、都の地下深くにある禁忌実験施設の真の入口を探るため、羅城門近くの寂れた一角へと向かった。そこは、都で最も貧しく、穢れが溜まりやすい場所だった。

二. 閃光の双子と、黄の結界

耀が、地下へと続く石造りの隠された階段を見つけ、霊符で封印を解こうとした、その時。

頭上に**「チリン」という、鈴の音が響いた。同時に、辺りが強烈な金色の閃光**に包まれた。耀は咄嗟に目を閉じたが、その光は霊力そのものに作用し、彼女の感覚を麻痺させる。

「白石 耀!貴女の清明結界に、民の血は通っているか!」

声と共に、一陣の風が巻き起こる。耀の前に現れたのは、白金 向日葵(しろがね ひまわり)。黄色チームのリーダーであり、双子の姉だ。彼女は、動きやすい簡素な装束を纏い、背中には呪術的な**「光速の呪布(じゅふ)」**を風になびかせていた。

その足元には、妹の白金 ゆうき。ゆうきは、向日葵の周囲に目に見えないほどの細い霊力の糸を張り巡らせていた。

「白金 向日葵。貴様らが、地下への侵入を阻止するのか」耀は麻痺した視界を無視し、聴覚と霊力感知のみで戦闘態勢に入る。

「阻止するのではない。貴女の欺瞞の正義を、この市井の地から追放する」向日葵は鋭く言い放った。

向日葵の呪布が光速で展開され、耀と咲耶を包囲する。それは、周囲の穢れた霊気を瞬時に浄化し、彼女たちの霊力のみを遮断する、完璧な金光の結界だった。

三. 貴族の裁きと、民の命

「私たち黄チームは、朝廷からも陰陽寮からも見捨てられた市井の民を守る」向日葵の瞳は、強い決意の光を宿していた。

「貴女の裁きは、都のを保つためだけに存在する。汚職貴族が民を苦しめても、朝廷の面子のために生かしておく。妖が羅城門の外で暴れても、結界の内側の安寧を優先する」

耀は言葉を失った。彼女の純白の裁きは、都の秩序を守るためのものだったが、それは確かに、都の外の民を見捨てることと同義だった。葉月(緑)が指摘した**「理の無関心」**は、この市井の地で、最も重い真実として耀に突きつけられた。

妹のゆうきが、霊力の糸を操り、耀の足首を絡め取る。

「私たちは、都の理ではなく、民の命を基準に動く。この地下施設は、穢れた民の霊力を吸い上げるための場所だ。貴女がここへ入れば、またしても都側の道具として利用されるだけだ」ゆうきは冷静に警告した。

向日葵は、呪布を剣のように鋭く収束させ、耀の胸元に突きつける。

「私たちにとっては、貴女の純白の光も、夜音の漆黒の憎悪も、所詮は都という巨悪を生かすための道具に過ぎない!」

四. 霊力の糸と、清明の突破

耀は、双子の猛攻に追い詰められた。

向日葵の光速の呪布は、文字通り光速であり、その物理的な速度は、耀の清明なる霊符の起動速度を上回る。さらに、ゆうきの霊力の糸は、耀の精密な霊力制御を阻害し、結界の展開を許さない。

「姉様!」咲耶が白銀の散華で援護しようとするが、向日葵はそれを結界の外へ弾き飛ばした。

「市井のことは、市井の者で守る!貴女の同情は無用だ!」

耀は、極限状態の中で、一つの事実に気づいた。向日葵の金光の結界は、穢れを浄化すると同時に、を遮断する。しかし、光が届かない場所、すなわちには、結界の隙間が生まれる。

黒崎 夜音と、天海 葵情報…すべてを組み合わせる!)

耀は、自らの純白の霊力を、普段の浄化ではなく、誘引のために使った。彼女は、意図的に自身の霊力を穢れた地下施設へと流し込み、**「餌」**として機能させた。

その結果、地下深くに潜んでいた穢れが、耀の霊力に引き寄せられ、瞬間的に濃い影を生み出した。

「そこだ!」

その一瞬の影の部分に、耀は**「精密一撃」の霊符を放った。霊符は、光速の呪布の法則の隙間**を寸分違わず貫通し、向日葵の足元の石畳を砕いた。

五. 葵の介入と、七色の同盟

向日葵は、バランスを崩し、結界が解ける。耀は、すぐに地下への階段を指さした。

「白金殿。私たちを道具と呼ぶのは勝手だ。だが、この地下で無色の存在がしていることは、都の民の霊力を吸い上げ、無色の妖に注ぎ込むことだ!それを知っていて、なぜ妨害する!?」

向日葵は驚愕した。彼女たちは、この施設が民の霊力を吸っていることを知っていたが、その背後に**「無色の存在」**という巨大な陰謀があるとは知らなかったのだ。

その時、頭上の路地の陰から、冷徹な声が響いた。

「白石殿の言葉は、私の情報と一致します」

現れたのは、天海 葵(青)と、パートナーの蒼井 凛。葵は、水鏡に、地下施設の詳細な霊力パイプの図面を映し出した。そのパイプの先には、無色の妖が封印されている場所が示されていた。

「このパイプは、市井の民の霊力を、妖の**『無色の印』**へと直接流しています。そして、黒崎 夜音(黒)は、そのパイプの破壊工作を仕掛けています」

葵は、耀、向日葵、そして咲耶を冷たい目で見つめた。

「藤の宮 菫(紫)は、黒崎夜音と、赤坂 椿(赤)の情報の一部を共有した。翠葉 葉月(緑)は、森の結界を張った」

葵は、初めて感情を滲ませたような、強い口調で告げた。

「このままでは、七色すべてが、奴の餌となり、都も森も滅びる。…白石 耀。貴女は、都の理を捨てた意志を持つ。私は、貴女の意志を情報で支援する」

葵は、向日葵に向き直った。

「白金殿。貴女の市井の抵抗も、黒幕の目論見を助長するだけだ。…一時的な同盟を結ぶしかない」

葵の論理、向日葵の抵抗、耀の意志。異なる正義を持つ三つの色が、共通の敵である**「無色の存在」に対抗するため、羅城門の陰で、歴史的な同盟**を結ぶことになった。

この同盟が、七色の異能の運命を、そして都の未来をどう変えるのか。物語は、いよいよ核心である地下迷宮へと突入する。

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