クロスカラーウオーズ|平安異聞「七色ノ裁キ」|第十話:そして、京の深き闇へ(終幕)

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第十話:そして、京の深き闇へ(終幕)

一. 夜明け前の都と、戦いの残響

地下の禁忌施設は完全に崩壊し、七色の異能者たちは、夜明け前の羅城門の外で、深い傷を負いながらも生還を果たした。

耀は、妹の咲耶の霊力で保護され、意識を取り戻した。全身の霊力は枯渇し、純白の装束は泥と血、そして無色の瘴気に汚れていた。彼女の隣には、疲弊しきった葵(青)と向日葵(黄)が静かに座っていた。

「雪斎…長老の霊力の残滓は、完全に消滅しました」葵が水鏡の解析結果を報告した。「しかし、地下で回収された無色のコアは、都中のあらゆる**『穢れ』**を一時的に封じ込めていた結界の役割も果たしていました」

雪斎の野望は潰えたが、その代償として、都の地下に溜まっていた本来の**「穢れ」**が再び溢れ出し始めていた。京の闇は、雪斎という巨悪がいなくなったことで晴れるどころか、より深く、混沌としたものへと変貌していた。

二. 新たな理の不在と、朝廷の隠蔽

朝廷と陰陽寮は、長老・雪斎が禁忌の存在であったという事実を徹底的に隠蔽した。

「すべては、『無色の妖』による暴走と、それに立ち向かった清明なる血筋の英雄、長老の殉職として処理されるでしょう」葵は冷たい目で言った。

耀は、その報告を聞いても、かつてのような**「都の理」を守るための義務感は湧かなかった。彼女の純白の裁きは、利用され、血に塗れていた。長老を討った今、彼女が戻るべき「正義の場所」**は、どこにも存在しない。

夜音(黒)は、遠くの羅城門の陰から姿を現した。彼女は耀を鋭く見据えたが、かつての憎悪の炎は消え、代わりに虚無的な諦めが浮かんでいた。

「長老を討ち、貴様の欺瞞の正義は終わった。これで、私の復讐は一応の区切りだ」夜音は静かに言った。「だが、忘れるな、白石耀。京の闇を創り出したのは、雪斎だけではない。理に縛られ、民を見捨てた貴族と朝廷の無関心だ

夜音は、影月闇音と共に、都の裏道へと姿を消した。彼女の漆黒の道は、これからも京の闇を監視し続けるだろう。

三. 各色の道筋と、約束

緋村 茜(赤)と赤坂 椿(赤)は、地下で破壊された霊力パイプの痕跡を調べ、新たな**「穢れ」**の発生源を特定し、それを炎で焼き尽くすために動き始めていた。

「裁きが終わっても、私の浄化は終わらない」茜は耀に向かい、力強い視線を送った。「貴様の純白とは、二度と道を交えることはない。だが、もし京が本当に滅びそうになったら…その時は、遠慮なく呼べ」

翠葉 葉月(緑)と藤の宮 菫(紫)は、互いの故郷の霊力の残滓を回収し、都の外の森へ、そしてかつての居場所の再興へと向かう。

「私たちの紫苑の怨念も、貴女の純白の光によって一時的に晴れた。だが、私たちはもう都には戻らない」菫は妖艶に微笑んだ。「耀。貴女は、都という結界から解放された。後は、貴女自身の意志で生きろ」

向日葵(黄)とゆうきは、市井の民を守るため、霊力パイプが破壊された場所で、穢れを浄化するための小さな金光の結界を張り続けていた。

「白石殿。貴女の裁きは終わったが、私たちの抵抗は続く。都が本当に民のために変わるその日まで」向日葵は、凛とした目で言った。

四. 純白の別れと、意志の光

耀は、傷つきながらも立ち上がり、葵と向日葵に向かって深々と頭を下げた。それは、陰陽寮の天才でも、裁き人でもない、一人の人間としての感謝と訣別の礼だった。

「天海殿。白金殿。貴女方の論理抵抗が、私をから解放してくれた。…私は、もう裁き人ではない」

耀は、陰陽寮から与えられた清明なる霊符と、かつて長老から与えられた純白の装束を、地下の崩壊した入口の前に静かに置いた。

「姉様…」咲耶が不安そうに耀を見上げる。

「咲耶。私たちは、都ののためにではなく、私たちの意志で生きる。この京には、私たちが守るべきと、私たちが築くべき正義がある」

耀は、妹の手を強く握りしめ、二人は都の東門へと歩き始めた。彼らの背中は、もはや陰陽寮の象徴たる純白ではなく、朝日を受けて薄く輝く新しい意志の光を帯びていた。

葵は、その背中を水鏡で静かに見つめていた。

「白石 耀…貴女は、理を捨てて、人間を選んだ。それが、貴女の最後の裁きだったのですね」

五. そして、京の深き闇へ

都は、雪斎の排除により一時的な平穏を取り戻したかのように見えた。しかし、長老の死により、朝廷の権力構造は崩壊し、穢れと欲望が渦巻く真の闇が、京の深層から再び這い上がり始めていた。

七色の異能者たちは、それぞれの信じる**「正義」「憎悪」「論理」「抵抗」、そして「情熱」を胸に、都の内外で活動を続ける。彼らの七色の光は、完全に一つに融合することはなかったが、互いを認め合い、時に監視し合うことで、京の闇に新たな秩序混沌**をもたらしていく。

耀と咲耶は、都を離れ、京の外の静かな地で、裁きとは異なる**「光の在り方」**を探し始める。

「京の闇は、裁きだけでは晴れない。…そして、**光(ひかり)**は、誰かのために存在する」

それは、純白の裁き人としての終焉であり、一人の異能者としての新たな旅立ちだった。都の闇は深く、物語は、彼らが再び京に戻り、互いのをぶつけ合う日を予感させながら、静かに幕を閉じた。

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